古書店インタビュー

あなたの本を未来へつなぐ

2019.08.08

古書店インタビュー

第0回「古本一括査定.com」

今、古本屋にできることは何か──。

八王子市でノースブックセンターを営む北野陽一郎さん。
480平米の事務所兼倉庫をひとつ、また同規模の倉庫を別にもうひとつ借りている。
いずれも、容易には一望に収めることのできない広さ。
棚にびっしりと並んだ本の在庫は20万冊にのぼる。

 

年間に舞い込む買取依頼は約60万冊。これは倉庫の容量を遥かに上回る数だ。
当然、お店で扱う分野も決まっており、すべてを引き受けることはできない。

 

本を行き渡るべき場所に行き渡るようにしたい。
捨てられる本を可能な限り少なくしたい。
そう考えた北野さんは、ある一つのサービスを始めた。
それが本サイト「古本一括査定.com」だ。
北野さんの秘策とは何なのか。話を聞いてきた。

 

 

「せどり」から古本屋へ

─ 北野さんが古本屋をやろうと思ったきっかけは、大学4年生のときの何気ない体験にあるそうですね。

 

北野:当時、僕は経営学を学んでいたんですけど、その分野の本を買おうと思っても新品だと高いんですよね。

でも大手の新古書店に行くと、定価数千円の本が100円とかで売られている。便利で助かるなと思って、いろいろ買い集めていました。

ある日、ほんの思いつきでそのうちの1冊を売ってみたら、買ったときより高く売れたんですよ(笑)。いわゆる「せどり」ですね。

もともと自分で何か事業をやりたいと考えていたのもあり、これをもっと回転させていったらどうなるんだろうと直感的に思って始めました。

 

 

─ 古本を扱うにあたって、実際に店舗を持つのではなく、ネット販売という形を選ばれましたね。

 

北野:ちょうど同じ時期にサービスを開始したAmazonのマーケットプレイスや、その少し前からあったYahoo!オークションなどに出品していました。

僕のお店で主に取り扱っている専門書は、特にネットとの相性がいいんです。

『ONE PIECE』などの人気のコミックであれば、どこの新古書店にもだいたいあると思うんですけど、

専門書となるとそうはいかない。

でも、そういう学術的な本も、ネットで探すとピンポイントで見つかることが多い。

日本中のどこにあったとしても、取り寄せることができるんです。

 

─ 一般的には、Amazonの登場で実店舗を持つ本屋の経営は大変になったと思われがちですが、古本業界での捉え方は少し違うようですね。

 

 

北野:もちろん、実店舗を持つ新刊書店にとってみたら、Amazonが脅威になるのもうなずけます。

古本屋にとってはどうだったかというと、個別ではわかりませんが、

古書業界全体で見ればお客さんの裾野を広げたという意味で、むしろ助けられた面が大きかったんじゃないですかね

Amazonが出てきたことによって、古本を身近に感じるユーザーが増えた。決済も簡単ですしね。

 

 

売り手と買い手のミスマッチ

─ 新しいものが次々と出てくる時代にあって、古本屋を営む意義はどこにあると思われますか。

 

北野:お店の側から見ていても、ただ単にお金に換えたいというよりは、この本を次の人に伝えてほしいという気持ちで依頼されるお客さんのほうが多い。

例えば、亡くなったご主人の遺していった蔵書を持ち込まれる方がいます。

そこには、

 

近しい人が大切にしてきた本を、同じように大切に扱ってくれる誰かにまた読んでもらいたいという思いがある。

その思いをつなげるのが、古本屋の重要な役目だと思っています。

 

では、その思いを僕たちが充分に引き継げているかというと、どうしても難しい部分がある

売り手と買い手とで条件が合わずに捨てられていく本もたくさんあるんですよね。それに対して何か行動しなきゃなというのがずっとありました。

 

─ それが今回の新しいマッチングサービスに結びつくわけですね。

 

北野: そうなんです。

それぞれのお店で得意な本は違います

でも、お客さんからしたら、どこに売ったら自分の本が一番適切に扱われていくのかがわかりにくい。

インターネットやタウンページで調べるのが大変なので、ひとつの場所で断られたら「じゃあ捨てちゃおう」となる人がいてもおかしくありません。

本を売りたい人と古本屋の間で、そんなミスマッチが結構、起きているんです。

 

お客さんが売りたいとなったときに適切な古本屋を選べるようになれば、

捨てられてしまう本を減らせるのではないか。

 

そう思って「古本一括査定.com」を立ち上げました。

 

 

 

青い三角屋根が目印のノースブックセンター

 

最適の古本屋と出会うために

 

─ これまでにも1冊ごとの買取価格を比較するサイトはあったと思うのですが、そのような従来のものと「古本一括査定.com」の違いはどこにあるのでしょうか。

 

北野:このサービスの一番の特徴は、お客さんに売りたい本をまとめて写真に撮って送ってもらうだけでも査定ができるという点です。

もちろん、冊数などの補足情報を記入してもらうと、査定の精度はさらに上がります。

なぜそういうことができるのか。実は、これが昔ながらの古本屋の値段の付け方なんです。

長い年月をかけて蓄積されてきたデータと勘があるからこそ、かなりの分量の蔵書を前にしても、それが全部でいくらぐらいになるか、パッと計算できるんですね。

─ いわば、本棚をまるごと査定してもらえるということですね。

 

北野:ただ、このような買取のプロセスは、売り手と買い手の間に情報の差があって、不透明になりがちです。

そこで、取引をより納得のできるものにするために、お店側から入札するという形式を採りました。

複数の古本屋が買値を提示することで、そこに価格競争の原理も働くでしょうし、値段そのものの正当性も保証される。

A書店だけで「これは100円で買取です」と言われたら、比較対象がないので「本当にそんな価値?」と疑問に思うかもしれません。

だけど、A書店もB書店も「これは100円」って言ったら、売るほうも「まあ、100円なんだろうな」と気持ちよく受け入れられると思うんですよね

あと、お客さんがお店を選ぶときに、入札価格だけではなくて、それぞれの古本屋の提示する条件やプロフィールなどを見比べられるのも、このサービスの強みです

 

─ 古本屋側にはどんなメリットがあるんですか?

 

北野:取引が成立した場合のみ、システムの運営を行う弊社で手数料をいただいているのですが、

それを広告費に充てることによって、さらなる集客として還元したいと思っています。

古本がどこに集まりやすいかというと、広告費をたくさんかけている大手の新古書店です。

でも、そういうところほど、実際に買い取れる本が少なかったりする。

データ管理のため、ISBN(図書を特定するための世界共通の番号)がないとダメ、少し汚れているとダメとか条件が厳しいんですよね。

その一方で、本と丁寧に向き合ってきた昔ながらの古本屋には、

本の価値を見極める力はあるけどインターネットの活用の遅れもあって、思うように本が集まらない。

大切な本を次の人へ伝えてほしい──。そういうお客さんの思いをつなぐサービスとして、古本一括査定.comが役立つならこんなに嬉しいことはありません。