古書店インタビュー

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2024.06.13

古書店インタビュー

第17回「ブックワームス ~「読む」と「飾る」の間で~」

愛知県名古屋市を拠点とする堀田直広さん(41)は、二つのネット古書店を営む。

一つは、古本全般の販売・買取を行うブックワームス。

もう一つは、インテリアや展示品としてディスプレイ用の古書を販売するブックワークスだ。

 

店名の由来を尋ねると、「名前を付けるのが一番難しくて。思いつきです」と答えた堀田さん。

淡々とした語り口から、事業を続ける秘訣が見えてくる。

 

「ブックワームス」の店主・堀田直広さん

 

オーストラリアへ行くつもりが……

―― 現在、堀田さんはブックワームスとブックワークスの2つの店を運営されています。どのような経緯で、古本の仕事に携わるようになったのですか?

 

堀田 もともと自分で古本屋をやるつもりはありませんでした。

きっかけとなる出来事があったのは、2005年頃のことです。福井県福井市で生まれ育った私は、幼なじみから「東京都八王子市のネット古書店で働くことになったんだけど、ちょっと手伝ってくれない?」と声をかけられました。

この「ネット古書店」というのは、本サイト「古本一括査定.com」を運営する北野陽一郎さんのノースブックセンターで、連絡をくれた幼なじみというのは、陽一郎さんの弟の浩平くんでした。

 

当時、私はワーキング・ホリデーの制度を利用してオーストラリアへ行く準備をしていました。お金を貯める必要もあったので、浩平くんからの誘いに乗って、福井から八王子へ出ることにしたのです。

ノースブックセンターで長く働こうとは考えていなかったのですが、手伝い始めたら楽しくて、気づくと5、6年が経っていました。

 

―― ノースブックセンターではどのような業務を担当していたのですか?

 

堀田 初めの頃は、宅配買取で送られてきた本をインターネット上のECサイトに出品する作業をしていました。

 

しばらくしてノースブックセンターに、新しい部門が立ち上がります。ディスプレイ用の古本を販売することになり、そこで担当を任されたのが私でした。

数ある古本のなかには、どうしても値段が付かず、処分するしかないものもあります。「読む」本として評価されなくなったとしても、「飾る」のを目的とすれば、また誰かに活用してもらえるかもしれない。そんな発想から、ディスプレイ用の古本販売は始まりました。

 

じつを言うと、私は以前からインテリアデザインに興味があって、愛知県名古屋市の専門学校で家具の設計などを学んでいた時期もありました。建築図面が読めたり、インテリアコーディネーターに関する知識があったりしたので、ディスプレイ用書籍の部門を担当するとなったときは、自分のやりたかったことと少しつながったように感じました。

 

―― どのようなタイミングで独立されたのですか?

 

堀田 ノースブックセンターで一緒に働き始めた北野浩平くんが2010年に独立し、ネット古書店の「レボブックストア」を開業します。それを見て、私も自分でやってみようかなと思い、2年後に「ブックワークス」を立ち上げました。

ブックワークスは、洋書・和書を問わず、ディスプレイ用の古本を販売・コーディネートする会社です。ノースブックセンターからの業務委託という形で、部門をそのまま引き継がせてもらいました。

 

「ブックワークス」のウェブサイト

 

―― ブックワークスを名古屋で開業されたのには、何か理由があったのですか?

 

堀田 独立するなら名古屋にしようと決めていました。専門学校の頃に暮らしていたのもあって、ここには友人もたくさんいます。また、仕事でちょくちょく東京へ行く機会もあるだろうと思っていたので、故郷の福井に比べ、移動時間が半分くらいですむ名古屋にしました。

 

コロナ禍が転機に

 

―― ブックワークスで販売されているディスプレイ用の古本は、どういったお客さんが利用されているのですか?

 

堀田 一時期、特に依頼の多かったのは、住宅展示場のモデルルームやハウスメーカーのインテリアコーディネーターです。店舗の設計士から注文を受けることもあります。

もちろん、法人ばかりでなく、自分の部屋を飾りたい人、あるいは結婚式場に置くウェルカムボードのスペースを飾りたい人など、個人として利用される方も少なくありません。

 

ディスプレイ用の古本をいきなり購入するのはハードルが高いと感じる人もいるだろうと思い、毎月人数と数量を限定して無料レンタルもやっています。一度試したうえで、新規にご注文いただけるケースもよくあり、やってよかったなと感じています。

 

―― 堀田さんはディスプレイ用の古本を販売するだけでなく、効果的な並べ方や見せ方の提案をなさっていますね。コーディネートする際に、どういった点に気をつけていますか?

 

堀田 一番大事にしているのは、お客さんとの話し合いです。自分のセンスを前面に出すというよりも、お客さんの思い描くイメージを引き出し、その理想にできるだけ近づけるためのお手伝いをしています。

たとえば住宅展示場のモデルルームだと、「40代の建築士の部屋」など、部屋ごとにテーマが設定されているので、それに合わせて本の内容や色味を揃えます。

在庫の状況によっては、すべての要望に完璧にお応えするのが難しい場合もあるのですが、どんな状況でもヒアリングをとおして、可能な限りお客さんのイメージを形にしようと努めてきました。口コミで評判が広がり、新規の依頼に結びつくことが多いのは、そのためかもしれません。

 

「ブックワークス」として手がけたコーディネート例

 

―― ディスプレイ用とは別に、一般の古本を取り扱うようになったのはいつ頃からですか?

 

堀田 独立を機に、通常の古本も一緒に販売・買取したいと思っていましたが、ディスプレイ用の事業がことのほか忙しくて、なかなか手を付けられずにいました。

 

転機になったのは、2020年のコロナ禍です。感染拡大への恐れから住宅展示場などにも人が来なくなって、ディスプレイ用書籍の受注が大幅に減りました。

経営面でかなりの打撃を受けたのと、せっかく時間ができたのもあって、一般の古本の販売・買取を始めるならいましかないと。急いでホームページを作ったり、出張買取に備えて大きめのワンボックスカーに買い換えたりして、同年秋に「ブックワームス」を設立しました。

 

「来年は私のところへ来てください」

 

―― 広く古本全般を対象としたブックワームスとして、特に力を入れていることはありますか?

 

堀田 開業してからまだそれほど時間が経っていないので、ひとまず買取件数を増やそうと、インターネット広告などを使って取り組んでいます。

 

名古屋を拠点にして良かったと思うのは、大学が多いこと。退官される教員から買取の依頼が来たので大学へうかがうと、「何千冊という本をまとめて持って行ってくれる業者がなかなかなくて困っている」という話を聞きました。そこで、値段が付く・付かないにかかわらず、すべて買い取るようにしたところ、好評だったのです。

嬉しいことに、ディスプレイ用の古本と同じく評判が口コミで広がり、別の教員から「来年は私のところへ来てください」と声をかけていただくようになりました。

 

「ブックワームス」のウェブサイト

 

―― ノースブックセンターで働いたときの経験で、ご自身の事業に生かされていると感じるものはありますか?

 

堀田 すべてです(笑)。私がいまやっていることはすべて、ノースブックセンターから学んだことなので、深く感謝しています。

そのうえで、買取の査定に関しては、多少時間はかかってしまうのですが、自分なりのやり方で一点一点値付けしています。というのも、膨大な数の買取を扱うノースブックセンターと、まだ規模の小さい私の店とでは、性質が異なると思うからです。

少しずつ買取の件数を増やしていくなかで、どういった値付けの手法がふさわしいのか、メリットとデメリットを見極めながら探っていきたいと考えています。

 

―― 今後、ブックワークスやブックワームスの事業をどのように展開していこうとお考えですか?

 

堀田 ブックワームスでは、お客さんのもとに出向く出張買取と、お客さんに当店の倉庫まで来ていただく持込買取をやっている一方で、本を箱詰めして発送してもらう宅配買取にはまだ対応していません。この宅配買取の実現に向けて動き出そうと、計画しています。

物流の2024年問題に伴う送料の引き上げなど、宅配買取をするに当たって越えなきゃいけない壁があるのは認識しています。でも、何があるかわからない時代だからこそ、古本屋にとって重要な買取のルートをたくさん持っておかないといけないと思っています。

 

ブックワームス ウェブサイト:https://www.book-worms.jp/

ブックワークス ウェブサイト:https://book-works.jp/

一括査定内サイト:https://books-match.com/shoplist/detail?id=51

 

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