あなたの本を未来へつなぐ
2021.03.04
古書店インタビュー
古本買取革命――。書名に「革命」の文字が並ぶ本は数多とあるが、屋号にその言葉を冠した古書店は、レボブックストア以外に存在するのだろうか。
創業は2010年。福井県福井市を拠点にネット古書店からスタートし、2017年からは買取専門の実店舗を構えている。代表の北野浩平さん(37)のほかに9名の従業員が、店舗と宅配での買取と、インターネットでの販売を行う。
北野さんはなぜ古本の世界で働くことにしたのか。そして屋号の「革命」という言葉にはどんな思いを込めたのか――。
30代にしてすでに10年を超える古書店経営のキャリアを持つ北野さんの話からは、多くの人が抱いているであろうネット古書店のイメージを覆す意外な実態が見えてきた。
買取専用店舗の外観
―― 古書店を始めようと思ったのはどうしてだったのですか。
北野 うちの家系は自分で会社を経営している人が多いんです。僕としては、学生の頃から一般の企業には勤められないだろうなと薄々感じていました。人に雇われるのは無理だろうなと。もしかしたら、北野家は勤められない家系なのかもしれません(笑)。
はじめから古書店をやろうと思っていたわけではないんですが、Amazonの創業者であるジェフ・ベソスが何かのインタビューで「通販業に一番適しているのは本だ」といった内容のことを言ってて、それに納得する形でネット古書店をやることにしたんです。
学生時代にWEBデザインやHP制作を勉強していたので、はじめの頃は神奈川県に拠点を置いてコンピュータに関する本を専門に扱っていました。その後、1年くらいが経ち、結婚を機に福井県に帰郷したタイミングでレボブックストアを立ち上げたんです。その頃から、コンピュータ以外の本も扱うようになりました。
買取専用店舗の内部の様子
―― 「古本買取革命」という屋号には、どんな思いを込めたんですか。
北野 そうですね。福井県で古書店をやるうえで、まずはインパクトが大事だと思ったんです。先に〝勤められない家系〟と言いましたが、他の人たちがやっていないことをやりたいという気持ちが大きかったんですよね。
例えば、4年前から実店舗での買取を始めたのですが、ネット古書店が実店舗を始めるというのは、一般的な流れとは逆なんです。つまり、実店舗の古書店がネットでの買取・販売を始めるというのが大半の流れで、その反対はまだまだ少ないわけです。
なにも他と違うことをやりたいだけでそうしたわけではなくて、ネットでの宅配買取だとどうしても配送業者の送料の値上げや規格の変更に左右されてしまうんです。ネットだけだと、常にそこにリスクがあるんですよね。
実店舗での買取は、主に新聞やフリーペーパーへの広告で宣伝をしたこともあって、今では買取全体の約4割を占めています。
―― 実店舗での買取を始めてみて、見えてきたことはありますか。
北野 やっぱり「高く売りたい」ということではなくて、「次の人に渡ってほしい」という思いで本を売られる人が多いってことですかね。あと、自分の本ではなくて、亡くなった夫や父親の本を売りに来られる人が多いですね。
それから、これまでは大手の新古書店に売りに行っていた人が、うちに持ってくると皆さん「こんなに高く売れるのか」と言ってくださったりします。大手の新古書店では買い取ってもらえないものも、うちでは買い取るケースが多いので、それも喜んでくれますね。
―― 一般論として、ネット古書店は事務的・マニュアル的で、実店舗の古書店はお客さんとの触れ合いを大切にされている印象がありますが、実店舗を始めてみてそのあたりの違いを感じたりしましたか。
北野 どうでしょうね。実は、うちのネット買取ではなるべくマニュアル対応をしないようにしてるんですよ。例えば、電話での問い合わせがあった時にも、お客さまの要望に沿えるように対応したり、世間話が始まったらお付き合いしたり。フリーダイヤルでやっているので、長電話になるとこちらの負担が増えるんですけど、それでもマニュアル対応よりかは良いかと思って。
その効果ははっきりとしていて、丁寧に電話の対応をしていると「あなたは信用できるから、ぜひお宅で本を売りたい」と言ってくれる方が少なくありません。仲良くなった方のなかには、売る本と一緒に差し入れのお菓子を郵送してくださった人もおられるくらいです。「みんなで食べてください」って(笑)。
過去にはこんなこともありました。高齢のお客さまが自身の終活として、大量の蔵書を何度かに分けて送ってくださっていたのですが、すべてが送られてくる前に、連絡がつかなくなってしまったんです。心配をしていたら、数日後にご家族から連絡を頂戴し、その方は亡くなってしまったとのことでした。ご家族の方いわく、高齢のお客さまはうちに本を売っていることをご家族にも話してくださっていたそうです。
昔からお客さまとやり取りをしていて感じるのは、顔が見えないネット古書店に不安を感じている人が多いということです。サイト上には明記されていない別料金を払わされるんじゃないかとか、値段が付かない本を送ってしまったら、逆にお金を請求されるんじゃないかとか。「うちはそんなことしませんよ」ということを伝えるためにも、やっぱりマニュアル対応じゃダメだと思うんです。
店内には買取作業中の本がずらりと並ぶ
―― 創業から10年が過ぎましたが、この間に業界の変化などを感じたりしましたか。
北野 うちがいまのところ生き残れているのは、創業当初から変化し続けてこられたからでしょうね。配送業者は変えてきましたし、買取対象も広げてきましたし、実店舗を持つようにもなりましたし。
送料の値上げなんかを考えると、やっぱり実店舗の方が有利なことは間違いないんですが、ネット古書店にはネット古書店にしかない楽しみもあるんです。例えば、ネットであれば全国から宅配で本が送られてくるので、自分たちの地域では見られない面白い本が集まってきたりします。Amazonでも売られていないような本があったりもするんです。そういうのは面白いですよ。
―― 最後に今後の展望についてお聞かせください。
北野 かなり先にはなると思うんですが、店舗で無人販売をやりたいと思っています。支払いは券売機にして、本棚を31本置いて、毎日1本分の本を入れ替える。そうすると、1カ月ですべてが入れ替わるので、常連のお客さまに楽しんでもらえるんじゃないかと考えているんです。
ネット古書店だと、販売価格がある一定の金額を下回る本を売ると送料などの関係からどうしても赤字になってしまいます。なので、買い取った本でも捨てざるを得ない場合があるんです。それが実店舗で販売すれば、販売価格が100円でも赤字にはなりません。せっかくお客さまが「次の人に渡ってほしい」と売ってくださったものなので、なるべく捨てたくないんですよね。
あとは、これもずいぶん先にはなると思いますが、将来的には古書の質入れみたいなこともやってみたいと思っています。
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