買取成約事例（詳細版）

鎌倉や室町時代を中心とした日本中世史関連書籍等を一括査定

今回は見出しのような書籍の一括査定を承りました。

ざっと拝見したところ、以下のような書籍に良い査定額がついたのではないかと思います。

①『新版中世武家 不動産訴訟法の研究』(下の写真の上段右端)

タイトルだけでもちょっと気になってしまう本書。「いざ、鎌倉！」という言葉もあるくらいですから「不動産」という概念があってもなんら不思議はないのですが、なんとなく中世における「不動産」は現代とは定義が違うような気がしてしまいます…。それも「訴訟法」となれば余計、当時はどんな様子だったのか気になりますね。

こちらの書籍は明治生まれの法制史学者 石井良助により著され、その初版が刊行されたのは1938年(昭和13年)のことでした。石井は東京大学名誉教授も務めた高名な学者であり、本書も名著として高く評価された本でしたが、なぜか一度も増刷されることもなく、復刊もされず、非常に入手が困難な書籍となっていました。

今回出品していただいたものは数多くの研究者のリクエストに応え、満を持して発行された2018年の新版です！実に初版から80年が経過しており、初版よりもレイアウトなどに配慮した読みやすい作りになっているなど工夫がされているようです。

上記の理由から非常に入手困難な書籍である+史料としても一級の価値を持つという評価から、今回も高額となったことは間違いありません。

②『改訂増補 故実叢書 11〜18 武家名目抄 (全8巻揃)』 (下写真  下段左端)

こちらは鎌倉・室町より時代は下り、江戸時代後期に編纂された『武家名目抄(ぶけみょうもくしょう)』(1860年頃完成)を明治図書が1993年に増補改訂した版となります。ちなみに、この『武家名目抄』は明治図書が刊行したシリーズ『故実叢書』の一部で、『故実叢書』は実に全40巻からなる一大プロジェクトでした。(そのため、上記の巻数も11～18 という中途半端な数が振られていますが、『武家名目抄』の部分はこの8巻で全巻揃いです。)

武家勃興期依頼の武家故実をまとめた史料として、こちらも大変貴重なものです。

③『加能史料』(下写真  下段左端)

加納でもなく、叶でもなく、『加能』です。こちらは古代から中世にかけての加賀・能登地域に関する史料を網羅的に編集した書籍となります。全32冊+補巻1冊の全33巻で刊行されました。今回はそのうちの9冊のみですが、1巻1巻がそれぞれ高値で取引されている書籍のため、不揃いであっても高額となったのではないでしょうか。

④『室町幕府文書集成 奉行人奉書篇 上下２冊揃』(下写真 中段 左から3、4冊目)

日本史上では、高い位の役職にある者がある事項について対象者(あるいは、対象者たち)に伝達したい場合、まず下位役職者にその旨を口頭で伝え、その下位役職者が自身の記名にてその旨を文書にしたため伝達対象者に発布するという伝達方法が取られていました。この際に作成される文書のことを「奉書」というそうです。

今回の書籍はそのものずばり室町時代の“奉行人が作成した奉書”が4,000点以上も掲載されている史料となります。1986年に思文閣より発行されました。発行元の思文閣のHPで定価を確認すると1冊7,700円(上巻)、8,800円(下巻)と元々高価な書籍ではありますが、古書であってもそれに負けないくらいの値段で販売されていることが多いです。

他にも『日本史講座』(東京大学出版会)など、全10巻揃いのものは非常に高値で取引されているものも含まれていました。こちらのシリーズについてはお写真を拝見する限りでは不揃いの5冊のみを査定ご依頼いただいていたようですが、これが全巻揃っていたら更に高い評価になったかと思います。

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