コラム

2020.06.21

コラム

シリーズ「世界の古本屋」 第2回「Addyman Books(イギリス)」

イギリスを構成する4つの地域の一つ、ウェールズ。その東端でイングランドと接する小さな町ヘイ・オン・ワイ(Hay-on-Wye)は、本屋が多いことで知られている。

 

今回、話を聞かせてくれたAnne Brichtoさんは、人口2000人に満たないこの町で、3つの店舗を共同経営している。

 

「Addyman Books」という名で本屋を始めてから30年以上。Anneさんの目には、どのような未来が映っているのだろうか。

 

 

「Addyman Books」の店先で、商品を使って“ソーシャル・ディスタンシング”を表すAnneさん(右)

 

訪れる人に〝魔法〟をかける

35年前の1985年、ヘイ・オン・ワイで、現ビジネスパートナーであり元夫――今でもいい友人です――のデレクと出会いました。職場が一緒だったのです。

 

会社を辞めて、自分たちの本屋を始めたのが1987年。地元のパブに隣接する4メートル四方の借家には、窓さえありませんでした。

思った以上に経営がうまくいき、半年後にはすぐ近くの大きな敷地へと移転します。これが、のちに本店となる「Addyman Books」です。

 

             本を模した看板が特徴的な「Murder and Mayhem」の外観

 

1997年には、通りの向かいにミステリー専門の「Murder and Mayhem」をオープン。さらに5年後、より“大人”向けの作品を扱う「Addyman Annexe」を開店しました。

これら3店舗は、いずれもヘイ・オン・ワイ市内にあります。

 

外から見た「Addyman Annexe」の窓。「Annexe」とは「別館」「離れ」の意

 

ここ数年の売上を見ると、収益の35~40%はネット販売によるものです。

一方で、運営している実店舗の見せ方にも気をつけています。訪れる人が〝魔法〟にかけられたと感じるような、そんな魅惑的な場所にしたかったのです。

事実、私たちのお店は、常連だけでなく、初めてこの町にやって来た人たちにとっても、ちょっとしたコミュニティーになっています。

 

 「Addyman Books」店内の様子

 

少なくとも私たちにとって、電子商取引の発展は、実店舗の運営を犠牲にして成り立ったわけではありませんでした。

むしろ、お互いに補い合っていると言えます。

「Murder and Mayhem」店内の階段

 

当然のことながら、常にいい本を揃えるよう努力しています。

私たちが特に力を入れているのは英文学、中でも近代以降の初版本です。

また、店に置いている在庫のほぼ半分を占める新刊書は、安く仕入れる工夫をしているので、値段も半額以下になっています。

 

「Addyman Books」の文学コーナー

 

インスタグラムで本を売る

今回の新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、3店舗すべてを休業しなければなりませんでした。経営的にも困難な状況が続いています。

(※ウェールズ政府は、6月下旬現在も事業者に対して休業の要請をしている)

利用可能な補助金には片っ端から申請しました。スタッフも、ひとりを除いてみんな自宅待機してもらっています。

「Addyman Annexe」店内の様子

 

このような状況下で重要になってくるのは、ソーシャルメディアをうまく利用して、店について広く知ってもらうこと。そして、店のデータベースをもとに、顧客との関わり方を探ることだと思います。

色ごとに陳列された20世紀初頭の布装丁の絵本(Addyman Books)

 

私たちは10年以上にわたって積み重ねてきたネット販売の経験をいかし、インスタグラム上でも本を売っています。

ときには、以前に特定の著者やジャンルの作品を購入したお客さんに直接連絡して、本を売り込むこともあります。

帳場にアクリル板を設置したり、一度に入店できる人数を設定したりと、感染対策は万全

 

ウェールズでは具体的にいつからお店を開けられるのかまだわからない中ですが、3店舗の再開へ向けて準備を進めています。店先に手を消毒するスペースも設けました。

お客さんに安心して来ていただける日が一日も早く来ることを祈っています。

 

 

※写真はすべて同店のInstagramから転用

【Addyman Books】

ウェブサイト:http://www.hay-on-wyebooks.com

Instagram:https://www.instagram.com/addymanbooks

 

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