古書店インタビュー

あなたの本を未来へつなぐ

2020.09.28

古書店インタビュー

第12回「Far Eastern Old Books ~ネット古書店の今~」

「Far Eastern Old Books」(http://fareastern-oldbooks.jp/)は、兵庫県西宮市の住宅街に事務所兼倉庫を構え、ネットのみで古本の買取と販売を行っている。

 

代表の安岡理可さんは、祖父の影響で子どもの頃から本に親しみ、過去には大阪の老舗「中尾書店」で働いたこともある。

 

オープンは2017年。現在もほかのアルバイトをしながら、同じく本好きで会社員の夫・賢二さんと二人三脚でネット古書店を切り盛りしている。

 

働き方が多様化する昨今を象徴するように、兼業で古書店を営む安岡夫妻。2人はどのようにしてこの業界に足を踏み入れることになったのか。そして、オープンから3年半がたった今、古書店の仕事にどんなことを感じ、何を考えているのだろうか――。

事務所兼倉庫で写真に納まる安岡夫妻

 

日常の延長のような感じ

 

きっかけは賢二さんの転職だった。2016年、賢二さんは15年間働いた出版社を退職することに。再就職を見越してのことだったが、収入は減ることが予想された。

 

賢二「要は、ほかにも収入を得なければならなくなったんですよ。それが古書店を始めた一番の理由です。当時は、次の勤め先が兼業を認めているかどうかがわからなかったので、ひとまず妻に代表になってもらったんです。

結果的に、転職先となった今の会社は兼業を認めているんですが、特に支障もないので妻にそのまま代表をしてもらっています」

 

賢二さんは古書店に加えてライター業もしている。一方の理可さんは、控えめな感じで当時のことを次のように振り返る。

 

理可「そうですね。『古書店をやろうと思ってる』と言うので、『ああ、そうなのね』って(笑)。代表とは言いつつ、私はちょっとしたお手伝いという感じです」

 

理可さんには実店舗の古書店で働いた経験があり、賢二さんは小遣い稼ぎのためにヤフオクなどで本やCDを日常的に売っていた。そうは言っても、いざ自分たちで古書店を始めるには、それなりの決心が必要だったはずだ。

 

賢二「もちろん、妻が古書店で勤務していた時の経験は大変に参考になりました。古書組合の市会への出品の手伝いなんかもしてたみたいなんで。

ただ、これといった決心はなかったんですよね。本好きの2人にとってはあまりにも自然な流れというか、気軽な感じで始めたんです。それこそ、日常の延長のような感じでしたね。

裏を返せば、今はそれができる時代なんだと思います。ほかの仕事もしている僕たちには、店番をする時間がなかったし、実店舗を持つだけの資金も持っていませんでした。それでもネット専業であれば古書店ができるんです。

うちは基本的には宅配で買取を行っているんですが――近くの方から要望があれば出張買取もしますけど――ノウハウは大手古書店などの他店の宅配買取サービスを利用してみて、参考にさせてもらいました。

具体的なことを言えば、ヤマト運輸さんの集荷サービスを活用すれば、宅配での買取ってそんなに難しいことではないんです。

また、ネットでの販売についてはSTORESを利用すれば簡単にECサイトができます。クレジットカード決済やコンビニ決済もSTORESに最初から装備されています。店のサイトは転職活動をしながら、WordPressの解説本を1冊買ってきて、自分で作りました」

 

「気軽な感じで始めた」「今はそれができる時代」と語ったとおり、「古書店をやろうと思ってる」「ああ、そうなのね」とのやり取りの3カ月後には、オープンに漕ぎつけた。

「Far Eastern Old Books」のWEBサイト

 

やっぱり、そこは寂しいですよね

 

屋号にある「Far Eastern」を直訳すると「極東」になる。「東の果ての古書店」との意味合いを英語表記にしておけば、海外からの集客につながるかもしれないと考えた。実際に、海外への発送を希望するお客さんも少なくないそうだ。

 

そんな同店には「通信販売部」という部門がある。店のサイトとは別に「通信販売部」のサイト(https://fareasternoldbooks.stores.jp/)が運営されていて、ここでは同店の在庫のなかでも特におすすめの商品が掲載・販売されている。

最大の特徴は、それぞれの商品ページにタイトルや価格だけでなく賢二さんのコメントが記されているところだ。ページを覗いてもらえれば一目瞭然だが、ネットで少し調べた程度の知識では書けない内容となっている。

これには、賢二さんが20代の頃に働いていたタワーレコードでの経験が関係している。

 

賢二「当時、タワーレコード梅田店でクラシック音楽のバイヤーをしていたんですが、自分でPOP広告を書いたり、売り場に立ってクラシック好きのお客さんと会話したりしてたんです。その時に、自分がおすすめした商品が売れると嬉しいわけですよ。

 それがネット古書店となると、当然そういうのはまったくないんです。うちはAmazonへの出品がメインだし。やっぱり、そこは寂しいですよね。それで、自分が推薦した本が売れる感触を少しでも味わうために、通信販売部を始めたんです。在庫は1アイテムにつき1冊しかないんで、コメントを書くのは商売としては割に合わない行為なんですけど」

 

先にも触れたように、実店舗を持たないネット古書店にしたのは、時間や資金の関係からだった。当初は自宅で古書店を始め、在庫が増えて自宅に入りきらなくなった頃から現在の事務所兼倉庫を借りることになった。

2人はオープンから3年半が経った今も、実店舗を持つつもりはないのだろうか。

 

賢二「案はありますよ。今の事務所兼倉庫の近くで良い物件があれば、お店を持ちたいと思っています。ただ、お店といってもローコストで運営できる新しい形態で考えています。事務所も倉庫も店も兼ねているような。

 例えば、本棚に並べてある商品はすべてAmazonや通信販売部でも併売していて、来店してくださったお客さんは、その場での現金での支払いではなく、スマホでAmazonや通信販売部を通じて買ってもらう。そうすれば、現金のやり取りがなくなるので、レジも必要ないし、お釣りを用意する必要もない。巷の自習室のように会員制で、出入口をオートロックにしてお客さんに自由に入ってきてもらえれば、一日中店番をしなくてもいい。それなら会社員としての仕事も続けられるかなとか。実店舗については、今のうちからいろいろ考えてはいるんです」

事務所兼倉庫のデスク

 

最初の1年は、ほとんど蔵書を売っていた

 

実店舗で働いていた経験のある理可さんは、古書店を始めるにあたって「本は重い」という実務経験者ならではの懸念を抱いていたという。

 

理可「本って重いですからね。本をダンボール箱にパンパンに詰めたら20㎏くらいになるんです。体力に自信がない私ができるかなと思っていました。夫にはできるだけ本を動かす必要がないようにしてほしいとだけは強く言いました」

 

賢二「僕はフルタイムで会社勤務をしているので、日々の運営は妻に頼らざるを得ません。

妻には体力的に負担をかけないように、イベントなどで外に出て販売することは控えて、ネットでの売買のみに専念しています」

 

では、Far Eastern Old Booksの場合、古書店の生命線とも言える仕入れルートはいかにして確保しているのだろうか。

 

賢二「仕入れが難しくてね。大阪と神戸の市会に足を運んでいるんですが、経験が浅いのでなかなか落札できない。お客さんからの買取依頼も少ないし。最初の1年は、ほとんど自分たちの蔵書を売っていた感じです。

2年目になって、どうしたものかと思っていた時に誘っていただいたのが古本一括査定.comだったんです。『新たな仕入れルートができたな』って、2人で喜びましたね。すきま時間に査定できるので、僕たちみたいに兼業で古書店をやっている人間にとっては、とても助かっています」

 

古本一括査定.comのサービスに対しては、とりわけ実店舗の方々から「写真だけで査定するのは難しい」という声が寄せられることがある。そうした声について、賢二さんが最後にこんな話をしてくれた。

 

賢二「僕らの場合は、写真と実物があまりにもかけ離れていたという経験はほとんどありません。いつも写真を見て想像していたとおりのコンディションの本が届くので、違和感や抵抗感はないですね。本の出版年や、Amazonや日本の古本屋などでどの程度のコンディションのものが多く出品されているのか調べて推測しています。慣れると写真を見て実物のコンディションを想像する時の精度も上がっていくと思います。なので、抵抗感がある人も、慣れれば普通のことになっていくと思います」

 

Far Eastern Old Books HP:http://fareastern-oldbooks.jp/

一括査定内サイト:https://books-match.com/shoplist/detail?id=40

 

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