2025.01.06
買取成約事例(詳細版)
今回は見出しのように和本の一括査定を承りました。
以前にも和本の買取事例をご紹介いたしましたように当サイトではたびたび和本の査定ご依頼があります。そして、予想以上に良い値段で買取成約となる事例も多いのです。
今回お出しいただいたものは大きく分けて5種でした。ざっくりとそれらを紹介させていただきます。
芥子園画伝(かいしえんがでん)は、中国の清代に刊行された彩色版画絵手本です。単に技術的な手ほどきだけでなく、絵を描くにあたっての精神論、哲学や道具の扱い方までを統一的に解説した絵画論であり、それまで門外不出だった絵画法を広めるものとして歓迎され中国で繰り返し再版されたそうです。
今回お出しいただいたものはアトリエ出版社から昭和49年に出された復刻版(全13巻)のうち、不揃いの5冊(第2巻:樹譜、第6巻:蘭譜、第7巻:竹譜、第8巻:梅譜、第9巻:菊譜)でした。復刻版ということもあり、1冊ごとのお値段はさほどお高くはありませんが、全巻揃いですと良い額で取引されている例もあります。
欠けなくご所有の方は、お譲りいただく際にはぜひ全巻揃いでお売りください。
「国史大系」は、日本史を研究する上での基礎史料となる古典籍を集成し、校訂を加えて刊行した叢書です。明治・大正期は経済雑誌社が、昭和に入ってからは吉川弘文館が刊行していました。
なお、新訂増補・普及版は昭和後期から平成にかけ度々刊行されたようで、お写真のお品はこの頃のものかと思われます。吉川弘文館が刊行した『国史大系』は全66冊にも及ぶようで、こちらもそのうち一部分の5冊をお出しいただきました。
こちらの著者の伊勢貞春(いせ さだはる)は江戸後期の武士で、有職家(ゆうそくか)でした。有職家とは朝廷や公家の儀式や行事の典故に通じている人を指します。彼のみでなく伊勢家は室町の時代から幕府中枢近くにいた名門家で、礼法に通じていました。そして、有職故実研究において“伊勢流”と呼ばれる一派を形成し優れた著述家を多く輩出しています。
貞春は寛政8年(1796年)幕命により『武器図説(全12巻)』を編集しました。今回お出しいただいたものも12巻までが揃っているようですね。江戸時代からのオリジナルでしょうか?!かなり貴重なものですね。
こちらは上の③の伊勢貞春の祖父にあたる伊勢貞丈による著書です。この貞丈は伊勢流の中でも突出した著述家とされており、非常に多くの著作を遺しています。ちなみに、こちらの本の中身はこのようになっています。
このページにあるような甲冑の他、武士の戦備全般(文字通り、弓や刀などの武器はもちろん、鞍や鞭などの馬具、扇や鉢巻、烏帽子などの装束など)を時に詳細な図版入りで解説しています。
ところで、貞丈がオリジナルの『軍用記』を著したのは1769年(明和6年)で、今から250年以上も前です。こちらの状態は良すぎるような気もするので1843(天保14年)の版でしょうか…?管理者側では実物を手に取れないので詳細は分かりかねますが、いずれにせよ貴重な資料であることには変わりありません。なお、天保14年版も高額で取引されています。
こちらも④の伊勢貞丈の著作です。「犬追物(いぬおうもの)」という言葉が耳慣れないという方も多いと思いますが、これは鎌倉時代から始まったとされる日本の弓術の作法・鍛錬法のことを指します。文字通り、馬に乗って犬を追いかけ回し矢で射るというもので、現在なら動物保護団体からクレームが殺到しそうな競技ですね。
ですが、流鏑馬(やぶさめ)、笠懸(かさがけ)と共に騎射三物の一つとされており、それを説明した典籍のバリエーションの多さからも伝統的な武術・馬術の世界では重要視されていたことが伺えますね。
ちなみに、こちらのシリーズも取引額は高めです。
さて、④の2枚目の画像で気になった方も多いかと思いますが、③と⑤にも「大正4年12月受入 大典記念 積徳文庫」と書かれた書票らしきものが貼付されていたようです。
「大典記念」とは天皇の即位式典を記念して行われるさまざまな事業や祝賀行事のことです。調べてみると、大正4年(1915年)10月から12月に大正天皇の即位式を記念した「大典記念京都博覧会」が催されていたとのこと。
そして、「積徳文庫」を調べてみると、江戸前期の儒学者で兵法家だった山鹿素行が開いた山鹿兵法を教授した道場、積徳堂に収められていた蔵書だと出るではありませんか!今回の③④⑤のお品は「大典記念」にこの由緒ある文庫から放出されたものだったのであろうか??などと想像してみましたが、詳細は不明です。
こういった歴史の痕跡に不意に触れることも古書・古典籍に関わることの醍醐味だったりします。
スタッフN
231216-009830
安心して信頼できるお店へ買取依頼できるサービス「古本一括査定.com」