2024.07.08
買取成約事例(詳細版)
今回は見出しのような画集の一括査定を承りました。
・・・「見出しのような」と言われても、「凹版印刷とは?」「紙幣と同じとは??」と疑問に思われる方も多いことでしょう。1つずつ説明していきたいと思います。
まず、こちらがその画集の表紙です。
立派な外箱に入っていますね。そして、下部に印刷された発行元を確認いたしますと…
大蔵省印刷局と書いてあるではないですか!
大蔵省印刷局とはかつての名称であり、現在は独立行政法人国立印刷局と呼ばれる組織で、紙幣・切手・旅券・証券類・政府刊行物等の公的な印刷を主に行っています。
日本の紙幣の偽造防止技術は世界でも最高水準であるとはよく聞きますが、優れたアイディアを実現するため、またそれを安定的に印刷し続けなくてはならないはずで、印刷そのものにも非常に高い技術水準が要求されるはずです。
こちらの画集はその紙幣印刷に使用される凹版印刷の技術を磨くため、技術者がその鍛錬過程で作成したものの中から傑作を収めたものなのです。
凹版印刷(おうはんいんさつ)とは、印字・印刷したい部分を削り、そのくぼんだところにインクをつける印刷手法です。
つまり、原画を作成する際には画線一本一本を彫刻刀で彫り上げる必要があります。平たく言えば版画なわけですが、驚くべきは版画でここまで表現できるのか?!というほど精密に再現された、その作品たちです。
思わず、「え?これ、彫って描いてあるの??」と声を上げずにはいられない作品です。この作品集を見るだけで、「ああ、このレベルの技術者たちが作った紙幣の偽造はできそうにないわ…」と犯罪組織も諦めてくれそうな気がします。
そして、これを作成した目的があくまで「技術向上のための鍛錬」なのですから、凄まじいストイックさですよね。人知れず埋もれてしまっていたかも知れない修行の結晶が日の目を見たことは、技術者の方にとっても苦労が報われた思いのする瞬間だったのではないでしょうか。
ネットで検索する限りでは、こちらの「西洋名画シリーズ」は今回ご依頼のあった「シリーズ1」に加え、「シリーズ2」と日本の名画も集めた「日本名画シリーズ」が少なくとも1回発行されているのが確認できました。
「西洋名画シリーズ2」はどうやら10枚のセットで、「日本名画シリーズ」も同じく10枚のようです。
さて、こちらの画集は書籍のようにノドが綴られているのではなく、1つの作品が一葉ごとに収められている形式をとっていることもあってか、ちらほらと出品されている中古品のなかには1~2枚が欠けているケースもあるようです。
そもそもの発行部数も限られていたようで(具体的な数については不明)、今回のように全ての作品が揃った状態でのご依頼はなかなかありません。
全品が揃っている点は査定額にも大きく影響するところでもありますが、日本の技術水準の高さと芸術的価値の高さの両方を感じることのできる、本画集の文化的・学術的な貴重さをより高めていると言えるのではないでしょうか。
スタッフN
230925-009164
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