2020.04.18
コラム
古書店と古書コレクター向けにアメリカで発行されている季刊誌『Fine Books & Collections』。
先日、同誌が運営するウェブサイトに興味深い記事が掲載された。
今月9日に行われたウェブ会議に関するもので、主催は国際古書籍商連盟(International League of Antiquarian Booksellers)。アメリカ、日本、イタリアなど7ヶ国の古書店主が、新型コロナウイルス感染症の影響と今後の対策について話し合った。
以下にお届けするのは、英語で書かれた原文の和訳である。
記事の紹介に同意してくださった執筆者のRebecca Barryさんに謝意を表する。
(元の記事:How COVID-19 is Affecting Antiquarian Booksellers)
(翻訳/高橋伸城)
ウェブ会議について報じるFine Books & Collectionsのウェブサイト
本日(4月9日)、国際古書籍商連盟(International League of Antiquarian Booksellers)が90分間のウェブ会議を開催。新型コロナウイルス感染症が世界の古書店にどのような影響を与えているのかについて話し合った。
オーストラリアで本屋を営む同連盟会長のサリー・バードン氏が司会を務め、アメリカからはブラッド・ジョンソン氏、イタリアからはマリオ・ジュッポーニ氏、イギリスからはポム・ハリントン氏、日本からは佐藤龍氏、フランスからはエルヴェ・ヴァランタン氏、そしてドイツからはジビル・ヴィードゥヴィルト氏が参加。活発な議論が交わされた。
ほとんどの書店は同じような状況に直面している。都市封鎖(ロックダウン)によって、店員は自宅で待機。当然、店舗を開けることもできない。
一方で、オンラインでの販売に本格的に移行したことで、ほぼ「通常どおり」の営業時間を維持している本屋も多い。
ジュッポーニ氏とヴィードゥヴィルト氏はそれぞれイタリアとドイツの観光地で店を営んでいる。たしかに経済の動きは普段より鈍いが、ヴィードゥヴィルト氏によれば、オンラインの業務で忙しくしているとのこと。時間のできた顧客のために目録も発行している。「景気は少し落ち込んでいるけど、社会の雰囲気は悪くない」と彼女は語る。
「日本政府が緊急事態宣言の発令に二の足を踏んできたこともあって、東京の古書店は悪戦苦闘している」と指摘するのは佐藤氏。
ジョンソン氏によると、アメリカでは州ごとに決定が下されているため、業務の移行が難航している。そんな中、氏は早い段階でカリフォルニアの店舗を閉め、従業員に在宅勤務用の機材を用意することができた。
書店員はこの状況下でどうやって生きているのだろうか。ハリントン氏はこう述べる。「ウイルスがもたらした最初の衝撃と、それに伴う休業のすぐあとは書籍販売のすべての部門で売上が低迷したが、この10日間で業績は回復している」と。ソーシャルメディア経由でも2冊の本が売れた。
コレクターたちは新しいシステムに適応し始めている。このような情勢だからと、買い手が大幅な値引きを要求するケースも一部の書店から報告されている。しかし、特にオークションの数が減少していることを考慮すると、書籍市場が堅調であり続けるのは明らかであり、安売りする必要はないだろう。
本の販売以外にも、書店員はさまざまに工夫を凝らす。顧客と再びつながる方途を探る。遠隔で新しい顧客を見つけるのに役立つ技術やソーシャルメディア・プラットフォームについて学ぶ。在庫の目録を作成する。
オンラインで公開している古い在庫に写真を加えるのも有効だとジョンソン氏は言う。
当然、日常的に対応しなければならない面倒な問題もたくさんある。従業員を自宅待機させたり、家賃の免除について問い合わせたり、出荷や輸出許可に関わる難問を解決したりといったことだ。すべての書店員がやるべきとハリントン氏が勧める保険の確認もそのうちの一つ。
コレクターたちにとって最大の収穫は、今後のブックフェアについて継続的になされている議論かもしれない。
ヴァランタン氏は、今月の後半にパリで予定されていた国際稀覯本フェア(International Rare Book & Fine Art Fair)が9月に延期されたことに言及。それに先立って、出展者は4月23日にオンライン上でブックフェアを開催しようと準備を進めている。購入希望者は目玉商品のリストを実際に閲覧できるそうだ。
「ファースト(firsts)」と呼ばれるロンドンの稀覯本フェアは6月に開催予定。どのような制限が必要なのか、政府からの回答を待っており、それまでは中止も延期もしないとハリントン氏は述べる。
新型コロナウイルス感染症が今後、古書の取引にどのような影響を与えるのかについて予測するのは困難だ。
短期間の移行という意味でなら、オンラインでの販売や仮想空間でのブックフェアはうまく機能するだろう。
その反面、町中の本屋やブックフェアの現場で本を見たり触ったりするのを楽しみにしている人もまた多い。
顔を合わせたやり取りがないのは、やはりとても寂しい。今回のウェブ会議の参加者たちは、痛切にそう感じた。
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