コラム

2021.06.18

コラム

シリーズ「世界の古本屋」 第5回「KEY BOOOKS(タイ・バンコク)」

日本企業の海外進出先や定年後のロングステイ先として人気があるタイ。全土で81,187人(外務省「海外在留邦人数調査統計」昨年10月1日時点)、首都・バンコクに限っても58,783人(同上)の日本人が暮らす世界屈指の日本人街となっている。

調査対象となる在留届を出していない人も含めればその数はさらに膨らみ、バンコクの一部地域には日本と見間違うほど日本食店がならび、日本人が行き交う。そして、日本の書籍を扱う古本屋も存在し、活字を求める日本人らの憩いの場となっている。

今回は、BTS(バンコクの市街地を走る高架鉄道)のプロンポン駅近くで2013年から古本屋「KEY BOOKS」を営むくずたによしこさんに話を聞いた。

KEY BOOKSの外観。間口こそ広くはないが、奥行きのある店舗は
3階まで本がびっしりと並ぶ

鍵で宝箱を開けるようなワクワク感

―― オープンに至る経緯を教えてください。

私は10年前にタイ人の夫と結婚するためタイに来ました。その後、タイ語学校に通ったりしていましたが、タイで古本屋をしていた知人から「広さも立地もちょうどいい空き店舗があるから古本屋を開いたらどうか」と勧められました。

その知人のサポートもあったほか、夫の父から資金援助を受けることができ、古本屋を経営することを決めました。 はじめはその知人からいろいろ教えていただきながら、2013年7月にオープンすることができました。

日本では接客業や経理の仕事もしていたので、それらの経験も役に立ったと思います。

 

―― KEY BOOKSという店名の由来は?

たくさんの本がどんどん入ってくる古本屋は素敵な本に出合える場所です。まるで鍵で宝箱を開けるようなワクワク感があると思い、KEY BOOKSと付けました。

通路が広く、すみずみまで清掃が行き届いた店内の様子

 

―― どれくらいの在庫があるのでしょうか。

本はオープン前に日本から1度送ってもらいましたが、 それ以降はタイで買取した本です。オープン時は6,000冊ほどだった在庫は、今では4万冊くらいあると思います。タイ在住の方はもちろん、駐在員のかたが任期を終えて帰国する際にたくさんの本を売ってくださるので、在庫は充実しています。

 

―― 最近はどんな本が人気ですか。

ここ最近は絵本、児童書が売れています。 コロナ禍で日本への行き来ができないからかもしれません。 また、タイ人のお客様も日本の絵本を購入されます。タイ語に訳された絵本が人気です。 あとは最近話題のマンガ「鬼滅の刃」「呪術廻戦」「サバイバルシリーズ」の問い合わせが多いです。

 

―― 新型コロナウイルスによる影響はありましたか。

タイでは昨年3月26日に最初の非常事態宣言が出されました。当店は1日だけ休業せざるを得なかったものの、その後はありがたいことにお店を開けて営業できました。 最初は閉店時間を早める時短営業を行っていましたが、昨年7月以降は通常営業できています。

 

2階のマンガコーナー

10年後もここで働いていたい

―― KEY BOOKSの特色などを教えてください。

毎日来られるお客様もいるので、本は入ってきたら常に入れ替えています。 在庫の整理や並べ替えが間に合わない時がありますが、代わり映えしないとお客様をがっかりさせてしまいますのでスタッフ一同頑張っています。

タイ人スタッフも日本語を使ってお客様に対応、サービスをしてくれています。タイにいながら日本語を話せるので、学生がアルバイトしたいと応募してきてくれます。 最近はインターンシップも受け入れています。

1年半ほど前からFacebookやInstagramでも本を紹介して売っています。Facebookを始めてからタイ人のお客様がかなり増えました。日本語が読めなくても料理本やインテリア、ファッション、デザイン、マンガなどに興味を持ってくださり購入してくれます。

アプリなどで見るかたが増えているせいか、マンガは以前より売れなくなったと思います。

 

―― 周囲には閉店した店もある中、今も続く要因は?

新しく入ってきた本を綺麗に拭いて入れ替えをし、棚の整理を月1回行っているからだと思います。ロケーションもよいのだと思います。フジスーパー(日本の食材や生活用品などが豊富な日系スーパーマーケット)が近いので、ついでに立ち寄ってくれるお客様がいます。お子様だけ当店に置いてお母さんは買い物に行かれたり、待ち合わせに使われたりします。

店内の案内表示には、「20バーツ(約70円)や「60バーツ(約210円)」などの〝均一本〟のコーナーも

 

―― どんな時にやりがいを感じますか。

やはりお客様に感謝のメッセージをいただいた時です。 小さなお子様が本を見つけてテンションが上がっているのを見るとうれしいです。

逆に「欲しい本がない」「紀伊國屋書店に行こうよ」という会話を聞くと、「すみません」と心の中で謝っています。

 

―― 今後の抱負などを教えてください。

夫やスタッフに恵まれ、これまで順調に経営できています。このKEY BOOKSをバンコクでずっと続けていき、10年後もここで働いていたいです。

バンコクの紀伊國屋書店に行く前に、来ていただけるようなお店にしたいです。スタッフが以前、KEY BOOKSの存在を知らず、毎回紀伊國屋書店で本を買っていて「けっこう値段が高かったので、KEY BOOKSで買えばよかったです」と言っていたので、古本に抵抗がなければ紀伊國屋書店に行く前に寄っていただきたいですね。

また、FacebookやLINE、Instagramでの販売も強化していきたいです。

 

Facebook

https://www.facebook.com/keybooks.th/

 

LINE @keybooks

 

Instagram

https://www.instagram.com/keybooksis/

 

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