2021.05.27
古書店向けお役立ち情報
古書店を運営する方や個人で古書の売買をする方に有益な情報をお届けする「古書店消息」――。第3回目は、Amazonでの売上に影響する「カートボックス」に注目します。
Amazonで売られている商品には、大きく分けて新品と中古品があります。本でいえば新刊書と古書です。
新品であろうと中古品であろうと、ほとんどの場合は1つの商品に対して複数の出品者がいます。お客さんはさまざまな理由によって、その中から店を選んで購入しているわけです。
複数ある出品者の中から購入先を決めるにあたって、お客さんの選択に深く影響していると思われるのが、「カートボックス」と呼ばれるものです。
パソコンのウェブブラウザでAmazonの商品詳細ページを開くと、右側の四角い枠の中に値段や販売元に加え、「カートに入れる」ボタンが表示されると思います。この枠で囲まれた区画がカートボックスです。
スマートフォンで操作される方の場合は、このように表示されます。
カートボックスを獲得できるのは、それぞれの商品ごとに1つの出品者だけ。手軽さという点で「カートに入れる」ボタンを押して購入するお客さんが多いでしょうから、出品者にとってこのカートボックスを獲得できるかどうかは売上を左右する重要な要素といえます。
古書を含む中古品にも同様の機能を持ったカートボックス(正式名称は「中古品を購入」ボックス)が存在します。ただし、同じ商品内に新品の在庫がある場合には新品が優先して表示され、中古品は新品のカートボックスの下の方にある「∨」マークをクリックしないと表示されません。
なお、新品がない商品については中古品のみが表示されます。
新品がある商品については、ユーザーから中古品出品のあることが見えづらくなっていることから、Amazonにおいては新品販売の方が優遇されている印象を受けます。しかし、そうした中古品に不利な状況を踏まえたうえでも、Amazonで販売する古本屋がカートボックスの獲得を目指すことには意義があると筆者は考えています。理由は2つあります。
第1に、新品がない商品に関しては、中古品を扱う出品者の間でカートボックスの枠を争うことになるからです。
カートボックスを獲得していれば、その分だけ出品物がお客さんの目に触れる機会は増え、購入される確率も高まります。
第2に、実際にカートボックスを獲得できるかどうかにかかわらず、顧客満足度を上げるための対策が今後ますます求められると推測できるからです。
本シリーズの第1回で取り上げた「追跡可能率」の本格的な導入にも明らかなように、Amazonは信頼できる出品者を優遇する取り組みに力を入れています。お客さんに良質な購買体験を提供したいというサービス全体の狙いからすれば、理にかなった傾向といえるでしょう。
このあと詳しく説明するように、カートボックス獲得のために設定されている諸条件も、こうした一連の動きと無関係ではありません。
カートボックスの仕組みを知り、対策を講じていくことは、Amazonで生き残る手立てにもなるのです。
では、具体的にカートボックスを獲得するための条件とは何なのでしょうか。
最初のステップとして、「Featured Merchant」のステータスを得る必要があります。これは、お客さんを継続して満足させているとAmazonが判断した出品者に与えられるもの。細かな数値などは公開されていませんが、注文不良率(60日間の注文数に占める不良数の割合)が主な基準になっているようです。
他の条件をいくらクリアしていても、「Featured Merchant」のステータスがなければカートボックスを獲得できません。つまり真っ先に問われているのは、個々の出品物の値段や状態ではなく、信頼できる出品者であるかどうかなのです。
「Featured Merchant」のステータスを持つ出品者が複数いる商品の場合には、それぞれの出品物がいくつかの条件にもとづいて評価され、そのうちの1つがカートボックスを獲得します。このとき、どういった条件が有利に働くのかについては、一応Amazonのウェブサイトに簡単な記載があるものの、詳しいことはわかっていません。そこで、筆者がこれまでの経験から重要だと感じている要件を以下にお伝えします。
出品物の評価でとりわけ重要だと思われるのは、コンディションです。例えば同じタイトルの古本を出品するのでも、状態が「可」よりも「良い」のほうが優先してカートボックスを獲得できる。
これを利用してか、「非常に良い」コンディションでの出品が目立つ業者も一部にはいます(実際に非常良い状態の商品ばかりなのかもしれませんが)。実際の状態から乖離する出品を続けると、一時的にはカートボック スを獲得できるかもしれませんが、いずれお客さんのクレームや低評価を招き、「FeaturedMerchant」のステータスを失う可能性もあります。
現時点で指摘できるもう1つの要件は、値段です。つまり、同じタイトルの古本だと、値段が安い方が上位にきやすい。ただし、優先順位でいくと上記のコンディションよりも低いのではないかと考えています。
実際、値段は一番安いのにカートボックスに選ばれていないケースは決して珍しくありません。逆に、値段は他より高くとも、状態が良ければカートボックスに表示される可能性は十分にあるといえるでしょう。
Amazonのウェブサイトを見ると、Amazonに発送代行を依頼する「FBA(Fulfillment by Amazon)」のサービスを利用していることも、カートボックス獲得の条件として挙げられています。
もっとも、FBAを利用していなくともカートボックスに選ばれている出品者はたくさんあるので、必須条件ではなさそうです。
信頼できる出品者が優遇される最近の流れを考慮すると、カートボックス獲得の条件もより複合的になっていくと思われます。
クレームや返品を少なくしたり、出荷遅延率や出荷前キャンセル率を低く抑えたり、お客さんを満足させる工夫が求められてきます。
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