古書店向けお役立ち情報

2021.03.04

古書店向けお役立ち情報

シリーズ「古書店消息」 第1回 目指せ追跡可能率95%!?

古書店を運営する方や個人で古書の売買をする方に有益な情報をお届けする「古書店消息」――。第1回目は、Amazonがこの4月1日から「出品資格維持のための指標」として新たに導入する「追跡可能率」について取り上げたいと思います。

 

いま、何が起きようとしているのか

Amazonで古書の販売をしている人々は、昨年末に衝撃を受けたのではないでしょうか。すべての出品者に送付された1通のメール。そのタイトルは〈「追跡可能率」を出品資格維持のための指標として導入します〉でした。

 

〈さらなるお客様満足度の向上のため、2021年4月より、出荷に関するアカウント健全性の指標として、従来の「出荷遅延率」「出荷前キャンセル率」に加えて、「追跡可能率」を出品資格維持のための指標として導入します〉

 

メールの文面にあったとおり、従来の「出品資格維持のための指標」は、「出荷遅延率」と「出荷前キャンセル率」の2つでした。今回、そこに「追跡可能率」が追加されるというのです。

 

周知のとおり、「出品資格維持のための指標」とは、仮に悪化した場合には自社出荷での販売資格が停止されるという出品者にとっては重要な指標です。新たに追加される「追跡可能率」については、「合計金額が2,000円以上(※消費税込み)の注文に対し、正しい配送会社名と有効なトラッキング番号/お問い合わせ伝票番号の入力が必須」となり、直近30日間で95%未満となったカテゴリーの商品(自社出荷のみ)の販売が停止されるようです。注意すべきは、「2,000円(税込)」には、送料も含まれる点でしょう

 

「追跡可能率」は、なにも今回初めて算出される数値ではありません。Amazonは以前から「追跡可能率」を算出していたわけですが、これまではあくまで努力目標として95%というパーセンテージが設定されていました。それがこの4月1日からは、「出品資格維持のための指標」になるわけです。

 

Amazonは、今般のルール変更で期待できることについて、①「購入者様からのお問い合わせを減らす」②「購入者様からの評価の改善」③「自社出荷商品への購買意欲の向上」――の3点を挙げています。

 

Amazonが挙げるメリットは、当然古書店側もわかっていますし、好き好んで追跡を付けないで送っているわけではありません。上記デメリットを考えても余りある〝価格の安さ〟から使っているのです。今後、追跡可能な配送に切り替えた分を商品代金に転嫁できれば問題はもっと簡単かもしれませんが、1円単位で熾烈な価格競争が行われているAmazon上ではそれは容易ではなく、実質的には古書店側の費用負担が増えることになると考えています。


さて、どうしたものか

この事態を受けて、Amazonで古書を販売する人々の頭に浮かんだのは「ゆうメール」だと思います。ゆうメールといえば、厚さ3㎝以下・重さ1㎏以内であれば、重量に応じて安価で郵送できるサービス――。ところが、このサービスはデメリットとして配達されるまでに一定の日数を要し、なにより〝追跡番号がない〟のです。つまり、この度のルール変更を受けて、これまで重宝してきたゆうメールが使えなくなってしまうわけです

 

さて、どうしたものか……。ひとまずここでは、ゆうメールに代わる配送方法をいくつか挙げたいと思います。Amazonからのメールには、「出品者様にはAmazon上で追跡可能な配送会社をご利用いただく必要があります」と書かれていました。ですので、「追跡可能な配送会社」のうち、比較的利用しやすいヤマト運輸と日本郵便の追跡可能なサービスを取り上げます。

 

1つ目はヤマト運輸の「ネコポス」です。配送料は全国一律で385円(上限)。厚さは2・5㎝以内で、重さは1㎏以内の規格です。特記すべきことは2つあります。1つはネコポスのサイトに「一部のフリマ・オークションサイト等をご利用の個人のお客さまは、厚さ3cmまでの対応が可能」と書かれてある点であり、もう1つは配送料の385円が〝上限〟となっている点です。これはあくまで筆者の経験則をもとにした予測ですが、普段からヤマト運輸を利用している方であれば、規格と料金について、交渉の余地があるように思っています。

 

2つ目は、日本郵便の「ゆうパケット」です。ゆうパケットの強みは、厚さによって配送料が変わることです。1㎝であれば250円、2㎝であれば310円、3㎝であれば360円です。重量は1㎏以内。追跡番号の有無以外の「ゆうメール」との違いは、「メール」は重さで料金が変わり、「パケット」は厚さで料金が変わるという点です。

 

3つ目は、日本郵便の「クリックポスト」というサービスです。おそらく、今回紹介するなかで最も安価なのは、このクリックポストだと思います。全国一律198円でありながら、厚さ3㎝以下、重さ1㎏以内という規格です。ただし、1回の取り込みが最大でも40件単位となるため、毎日数百件出すような業者には不向きの可能性もありますが、筆者は利用したことがありませんのでここでは言及しません。

 

4つ目は、これも日本郵便の「レターパックライト」です。配送料は全国一律で370円。規格は厚さ3㎝以下、4㎏以内です。利点は、重さの規格が4㎏以内ということでしょう。ちなみに、520円の配送料を払えば「レターパックプラス」を利用でき、これなら4㎏以内であれば厚さの上限はありませんし、郵便受けへの配達である「ライト」とは異なって対面でのお届けになります。

 

紹介するサービスは以上です。まとめると、配送する件数が多くない場合は「クリックポスト」の一択ある程度の件数がある場合は「ネコポス」か「ゆうパケット」で、ヤマト運輸と日本郵便に規格や配送料について交渉してみるのが良いと思います

追跡サービスあり発送方法比較表
ネコポス ゆうパケット クリックポスト レターパックライト
事業者 ヤマト運輸 日本郵便
値段 全国一律385円(上限) 厚さ1cm:250円
2cm:310円
3cm:360円
(全国一律)
全国一律198円 全国一律370円
サイズ (上限)角A4サイズ

(縦31.2cm以内×横22.8cm以内)

(下限)縦23cm以上×横11.5cm以上

長辺(34cm以内)+短辺+厚さ
=60cm以内
長さ:14cm~34cm
幅:9cm~25cm
34cm×24.8cm(A4ファイルサイズ)
厚さ 2.5cm以内※

※一部のフリマ・オークションサイト等を利用の個人客は厚さ3cmまでの対応可能

3cm以内 3cm以内 3cm以内
(配送料520円にすれば「レターパックプラス」となり、厚みの上限がなくなる。)
重さ 1kg以内 1kg以内 1kg以内 4kg以内
支払い方法について
特記事項
掛売契約締結可 掛売契約締結可

現金、切手、
キャッシュレス決済可

掛売契約締結不可

クレジット決済のみ
(ヤフーJAPANかAmazonPayのアカウントが必要)

掛売契約締結不可

レターパックを購入

補償 1個につき3,000円まで なし
備考       値段等について交渉の余地あり       値段等について交渉の余地なし
その他 件数が多い場合は不向き(?)

 

新しいルールの運用開始は4月1日ですので、すでに1カ月を切っています。「いつのまにか販売資格が停止となってしまった……」といった事態に陥らないよう、いまのうちから対策を講じておく必要があると思います。ちなみに、将来的には2,000円以下の商品が「追跡可能率」算出の対象になる可能性も十分に考えられます。そのことも念頭に置いて、対策を進めるのが良いでしょう。

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